コラム

カテゴリ:調査/解析, イベント

第31回日本エイズ学会学術集会に参加して―医療者と患者のコミュニケーション―

こんにちは。調査研究コンサルティング部門の根岸です。

2017年11月24日(金)~26日(日)まで、第31回日本エイズ学会の学術集会が開催されました。
第31回日本エイズ学会
弊社では、エイズに関するいくつかの研究に関わっています。
エイズについて知見を広めるため、私も参加し、シンポジウムと一般口演を聞いてきました。
そこで学んだことや感想を書いていきます。

シンポジウム「コミュニケーションの重要性を見つめなおす ~医療者のホンネ、患者のホンネ~」
このシンポジウムでは、医療者とHIV陽性者とのコミュニケーションにおいて課題と思われることや、現場の方の対応が取り上げられました。
まず、医療者と患者のコミュニケーションについて、HIV陽性者の調査結果の発表がありました(この調査にはアクセライトが制作した調査エンジンが用いられました!)。
患者さんの抱えている悩みには、体調のこと以外にも、メンタルに関すること、社会的なことなどがあります。ところが「医療者に話していいのかわからない」「医師の前では『良い患者』でいたい」などの理由で、なかなか医療者には話せないとのことでした。
続いて看護師・医師から、現場でのコミュニケーションについて情報提供があり、最後に患者の電話相談を受けていらっしゃる方から発表がありました。

私は以前、看護師として病棟で勤務していました。当時の経験を鑑みても、やはり、医療者と患者とのコミュニケーションは重要だと感じます。良いコミュニケーションを取ることは、信頼関係の構築につながります(「良い」コミュニケーションとは何か、はここでは深堀りしませんが)。信頼関係を築くことで、コミュニケーションから得られる情報の量や質が増し、よりその人に合ったケアを提供できるようになります。それでまた信頼が深まるという、正の循環があるように思います。

HIV陽性者の治療に関わる重要な情報には、セクシュアリティやセックスなどの極めてプライベートなトピックがあります。
一方で、患者さんの受診頻度はそう高くありません。本シンポジウムの発表によると、HIV陽性者には、必要とされる定期受診が年3〜4回程度の方も多くいらっしゃるそうです。
限られた診療時間で、繊細な情報をどう引き出すか? いかに医療者を信頼してもらうか? が、HIV陽性者の治療においては特に重要なのだと感じました。

そのためには「あなたに」関心があるという態度が必要なようです。
シンポジウムの中で、患者さんとのコミュニケーションのポイントについて「患者さんの好きなものを覚えておく」「怒る時は本気で怒る」などが挙げられていました。
患者というラベルでひとくくりにせず、名前のある個人としてのあなたに注意を払っているという態度が、信頼につながるのでしょう。

このような態度は、HIVポジティブの方だけでなく、人と関わる時にはいつも大切にしたいと感じました。エイズにとどまらない収穫のあったシンポジウムでした。

根岸麻歩由

この記事を書いた人

根岸麻歩由

東京大学医学部健康総合科学科看護学コース出身。成人看護学教室(現高齢者在宅長期ケア看護学/緩和ケア看護学教室)にて量的研究を学ぶ。学部卒業後、東大病院にて看護師として勤務したのち、アクセライトに入社。保健師の資格ももち、現場視点での調査研究には定評がある。