Web調査―コラム

Web調査は、紙で行う質問紙調査と比べて、回答率が下がりませんか?

調査研究コンサルティングチームの根岸です。この記事では、紙での質問紙調査とWeb調査の回答率の違いについてお話しします。

Web調査の回答デバイス

Web調査の回答率は、回答デバイス(スマートフォンやパソコンなど)の所持率や、操作の慣れの程度に大きく影響されます。

回答デバイスの所持率は、年代が若いほど高いです。高齢者が対象の場合は、普段からスマートフォンやパソコンを使い慣れている層でなければ、紙で行う調査の方が回答率は高くなるでしょう。とはいえ、2022年時点で、60代でも8割以上がスマートフォンを所持しているという調査もあります(※1)。

紙調査とWeb調査、回答者の属性の違い

また、紙で行う調査とWeb調査では、回答者の属性に違いが出る可能性があります。回答者自身で回答方式を郵送とWebから選べるようにした調査では、Webから回答した者は男性・若年者・未婚・高学歴・就業者である傾向が強いという調査結果があります(※2)。ただ、これについては、紙で行う調査でも回答者は高学歴に偏るという研究結果もあります(※3)。

Web調査のメリット

紙で行う質問紙調査と比較したWeb調査のメリットとして、質問紙調査ではリーチしにくい対象者に回答してもらいやすくなることが挙げられます。これには二つの側面があります。

一つは、Web上で回答する調査の場合、センシティブな回答への回答率が高まる可能性がある点です(※4)。匿名性が確保されていることから、回答率が高まることが期待されます。また、より直接的な質問を調査に含むことも検討できます。

もう一つは、Web調査と合わせて広報活動を工夫することで、質問紙調査では対象にできなかった人たちからの回答を得ることが可能になる点です。Web広告を出したり、特設サイトを公開したりすることで、Web調査にアクセスしてもらいやすくすることができます。弊社では、スティグマのある疾患をもつ患者対象のWeb調査の実績などがあります。


※1 スマートフォンの所持率は、2022年時点で20~50代は9割を超え、60代は8割強、70代は6割と、年代が上がるにつれ所持率が下がるという調査結果があります。なお、世帯別にみると、スマートフォンを保有する世帯は9割を超えています(いずれも令和4年通信利用動向調査)。

※2 千年よしみ.ミックスモード調査における郵送・ウェブ回答の回答率・回答者属性・項目無回答率の比較―住民基本台帳からの無作為抽出による SOGIをテーマとした調査から―.人口問題研究.2020, 76(4), 467-487.

※3 萩原 牧子.インターネットモニター調査はどのように偏っているのか―従来型調査手法に代替する調査手法の模索―.Works Review.2009, 4, 8-19. 

※4 提言 Web 調査の有効な学術的活用を目指して 令和2年(2020年)7月10日 日本学術会議 社会学委員会 Web調査の課題に関する検討分科会