ePROとは
被験者から直接得られた健康状態のあらゆる側面に関する評価結果で、その評価結果に医師や他のものによる解釈が追加されないデータのことを「患者報告アウトカム(PRO:Patient Reported Outcome)」と呼びます。
臨床試験では、被験者の主観的なデータを収集することがますます重要になってきており、海外の規制当局であるFDAやEMAもePROによるデータ収集を推奨するといった背景があります。
※ePROは、electronic Patient Reported Outcome(電子的な患者報告アウトカム)の略語で、PROを取得するためのシステムあるいは、単にPRO(患者が直接報告するアウトカム)を指すことがあります。
ePRO導入のメリット
PROの収集方法として、従来は紙媒体によるもの(pPRO:paper PRO)を利用していましたが、近年では電子的に収集する臨床研究が急増しております。電子的に収集したPROのことを「ePRO(electronic PRO)」「e-PRO」と呼びます。
pPROに比較してePROは、被験者の入力やデータの管理が容易であり、データの品質やトレーサビリティの観点から海外の規制当局であるFDAやEMAがePROを推奨をするといった背景もあって、今後は日本でもePROを用いる臨床研究が増加することが予測されます。
p-PROとe-PROの違い
p-PRO | e-PRO | |
---|---|---|
回答日 | いつ記載したか不明 | サーバー時刻で管理 (改ざん不可) |
入力のリマインド | 困難 (電話等で別途必要) | 自動メール送信 / アプリ通知が可能 |
調査票の配布・回収 | 個別に配布・回収が必要 | 一括・自動で配布・回収 |
データモニタリング | 提出時に確認 | リアルタイム |
データの保存性 | 紛失の可能性あり | サーバー上に保存、バックアップ可 |
入力ツール | 紙・ペン | スマートフォン・タブレット・PC専用端末等 |
被験者のトレーニング | 従来の方法で対応 | アプリ操作方法等のトレーニングが必要 |
導入コスト | 低い | 高い |
データクエリ / クリーニングコスト | 高い | 低い |
pPROでは、下記のような欠点が指摘されています。
- ● 紙を紛失してしまう
- ● リアルタイムな入力管理が出来ない
- ● 記録を提出後、解析のためにデータを電子化する必要がある
一方、ePROでは、これらの欠点を補うことができます。一度サーバーに送信されたデータは、多重化されているため紛失の可能性が著しく低くなります。入力にはタイムスタンプが付与され改竄できませんのでPROをリアルタイムに把握することが出来ますし、入力促進もリアルタイム、かつ、自動で行う事も可能です。入力時点で電子化されているので、データの利活用もリアルタイムで行うことができます。
例えば患者報告のアウトカムに応じて医療機関に自動でアラートを飛ばすことも可能ですし、患者のセルフチェックとしても応用可能です。
臨床研究におけるデータ管理にEDCを用いるのが当然になってきたように、今後、PROを取得するためにはePROを用いるのが当たり前になってくるでしょう。実際、ePROが単にPROを指すことも増えてまいりました。
一方で、ePROが紙によるPRO(pPRO)に完全に置き換わる、というわけではありません。重要なのは患者アウトカムを臨床研究に取り入れて実臨床に役立てることであり、ePROを利用できない場合にはpPROの採用やpPROとePROの併用も時には必要となります。スマートフォンの急速な普及により、ePRO導入の素地は整ってきていますが、それでもその導入可能性を良く検討し、スムーズな導入のための準備やサポートが必要といえるでしょう。
面倒と思われがち?ePROの導入について
実は導入時に施設側での負担はほとんどありません。ePROではpPRO(下記でご説明)と異なり、来院毎の紙媒体の回収等の作業が発生しませんので、ePROを一度使っていただいた施設様では紙よりも電子の方が楽というお声をいただくことが多くなっています。
被験者にePRO入力をご案内する流れは以下の通りです。
- ①被験者から同意を取得
- ②施設側でePRO/EDCシステム上において被験者登録
- ③ID/PWを記載した説明用紙を被験者にお渡し
- ④被験者はWebブラウザにてログインを行うことでePRO入力が開始
被験者向け・施設向けにそれぞれにA4 4枚程度の説明用紙をご準備しております。 お手元にそれぞれの説明用紙を ご準備いただきましたら簡単にご利用を開始していただけます。