逸脱とは
前回は「逸脱事例」に関するモニタリング担当者(DM担当者含む)としての実際の対応や心構えについて書かせて頂きました。今回も引き続き「逸脱」に関するテーマで、もう少し掘り下げて書いてみたいと思います。「逸脱」の種類や内容について、確認しておきましょう。
<前回のコラム> 免脱事例対応の実際
~参考資料のご紹介~
「JCOG プロトコールマニュアル version 3.7」では、逸脱の意味や分類が分かりやすく記載されています。私自身、実務で事あるごとに参照しています。逸脱のほか、プロトコルを作成する上での研鑽教材として非常に参考になる資料となっています。ご興味のある方は、是非一度目を通してみることをお勧めします。
<「逸脱」について整理してみましょう>
※上記のJCOG資料を参考に記載しています
①違反(violation):
担当医/施設に原因があって臨床的に不適切であり、かつ「試験のエンドポイントの評価に実質的な影響を及ぼす」、「故意または系統的」「危険または逸脱の程度が著しい」など複数に該当する場合
✔ 論文公表する際に原則として個々の違反の内容を記載する
✔ 臨床研究法における「重大な不適合」に相当する
②逸脱(deviation):
治療(薬剤投与、放射線治療、外科的切除など)、臨床検査や毒性・有効性の評価などがプロトコルの規定に従って行われなかった場合(①③に該当しない場合)
✔ 論文公表する際に記載することが望ましい
✔ 臨床研究法における「不適合」に相当する(「重大な不適合」とはしない)
③許容範囲の逸脱(acceptable deviation):
研究代表者/研究事務局とデータセンター間などで、試験開始前または試験開始後に試験毎に設けた許容範囲内のプロトコルからの逸脱
✔ モニタリングレポートに掲載しない(許容範囲を超える逸脱は「逸脱の可能性」としてモニタリングレポートに列記される)
✔ 臨床研究法における「不適合」としない
なお、③はプロトコルからの一時的な逸脱のようなもので、その影響が被験者の安全性や試験結果の信頼性に影響を及ぼさないもので、具体的には以下の事例があると考えられます。
・検査漏れ:予定されていた検査が一部実施されなかった場合でも、その検査が試験結果に重大な影響を及ぼさない場合
・併用禁止薬の投与:被験者が誤って併用禁止薬を服用した場合でも、その薬物が試験結果や被験者の安全性に影響を及ぼさない場合
・治験薬の保管:治験薬が一時的に飼育室に保管された場合でも、その保管が治験薬の品質に影響を及ぼさない場合
以上を念頭に、試験毎の特性に鑑みて、起こりそうな逸脱事例をイメージしたり、書き出したりしてチーム間で共有しておくことは、とても重要なことと思います。
今回は前回に続いて、逸脱についてでした。今日も皆さまの試験がうまく回りますように。